【#03】とうもろこしと、あの日の写真――家族がくれた手術前の思い出

先天性心疾患の記録

前回は、生まれてすぐ家族に知らされた病名と、私の身体のことについて綴りました。
今回は、手術を控えていた2歳のころの私の様子と、そのときの家族の思い出について書いてみます。

 

私が2歳のとき、心臓の手術を受けることが決まっていました。
そのとき家族は、「何か思い出を残しておきたい」と思って、私を北海道旅行に連れて行ってくれたそうです。

でも、私はそのときのことをまったく覚えていません。
私に残っているのは、ほんの数枚の写真だけです。

車の中で、とうもろこしを食べながら眠っている私。
頭だけがぽこっと大きくて、体は細々としていて。
幼くて可愛らしいけれど、どこか“か弱い”ようにも見えました。
滝の前で撮った写真には、疲れているような表情も写っています。

そのころはまだ、唇が青くなるチアノーゼや、指先が膨らむバチ指のような症状ははっきりとは出ていなかったそうです。
けれど、家に帰るころには、そういった症状が少しずつ現れ始めていたと、あとになって父と母から聞かされました。

ほんの数歩歩いただけでしゃがみこんでしまったり、
階段を上るとすぐに息が切れたり――
今思えば、それもファロー四徴症が出していた“からだのサイン”だったのだと思います。

私はまだ小さすぎて、自分の状態なんて理解していなかったけれど、
「何かがおかしい」と、私の身体はちゃんと訴えていたのかもしれません。

家族がくれた北海道旅行の思い出は、記憶ではなく写真に残っているだけ。
でもその一枚一枚には、「この子に、元気で生きてほしい」という家族の願いがたしかに込められている気がします。

 

次回、「命を託すということ――名医との出会いと、生きるための血」


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