中学生のとき、私はブラスバンド部に入っていました。
音楽が好きで、吹奏楽の演奏を聞くと胸がワクワクして、あの一体感に憧れていたんです。
でも――私には、最初から“できない楽器”がありました。
それが、金管楽器です。
「金管楽器は禁止」──健康管理表の現実についてお話しします。
毎年の定期検診で・・・
心臓の病気がある私は、毎年、病院で「健康管理表」という紙をもらっていました。
そこには、できる運動・できない運動のチェック欄があって、
「長距離走」「遠泳」そして「金管楽器」にバツ印がついていました。
当時は正直、「なんで?」と思っていました。
普通に生活できるし、走るのもまあまあできる。
息を吹くだけの楽器が、なぜダメなのか。
なぜ金管楽器がダメなの?
大人になってから調べて、ようやく理由がわかりました。
金管楽器(トランペットやホルン、チューバなど)は、
息を吹き込むときに口をすぼめて強い圧をかける必要があります。
この「息を吹き込む圧力(=胸腔内圧)」が上がると、
心臓に一時的な負担がかかるんです。
特に先天性心疾患や手術歴がある場合、
その圧力変化が血流や心拍リズムに影響を与える可能性があります。
つまり、金管楽器はただ「肺活量を使う」だけでなく、
心臓にも小さなプレッシャーを与える楽器なんですね。
クラリネットという選択
金管がダメならどうしよう――
そう思って選んだのが、クラリネットでした。


♪パパからもらった クラ~リネット♪の歌で出てくるあの楽器です。
クラリネットは木管楽器で、
金管ほど強い息の圧は必要ありません。
それに、音色がやさしくて、どこか人の声に似ているところが好きでした。
ただ、部活は想像以上にハード。
土日は一日練習、コンクール前は朝練もあって、
体力のない私は、月曜日になるとぐったり。
「また部活か…」と憂うつになることも多かったです。
でも、演奏会の日のあの舞台の光だけは、今でも忘れられません。
「できない」中で見つけた「できる」
あの頃の私は、「できないこと」にばかり目がいっていました。
長距離走もできない、金管も吹けない、
みんなと同じように頑張れない――そう思って落ち込む日もありました。
けれど今思えば、できないことの中にも選べることがあった。
クラリネットを通して音楽を楽しめたこと、
仲間と笑いながら過ごせたこと。
それだけで十分、「できていた」んだと思います。
おわりに
病気があると、「できない」の壁にぶつかる瞬間がたくさんあります。
でも、そこで終わりじゃない。
「じゃあ、どうすればできる?」を探す力が、きっと私たちにはある。
中学時代のクラリネットの音は、
そんな自分へのエールみたいに、今も心の中で響いています。


