「また巻き肩が戻ってるね」
月に1回の整体でそう言われるたびに、私は少し落ち込んでいた。矯正しても矯正しても戻ってしまう肩の角度。左右の高さもずっと揃わない。
ストレッチも呼吸も気をつけているはずなのに、どうしてだろう──。
でも最近ようやく腑に落ちた。
“これは私の姿勢が悪いんじゃなくて、身体の歴史がつくり出したものだ” と。
2歳と36歳、2度の開胸手術。その後に残ったもの
私は先天性心疾患ファロー四徴症で生まれたので2歳1ヶ月の頃に根治術と、36歳のときに肺動脈閉鎖不全症のため肺動脈弁置換術の開胸手術を二回受けている。どちらも胸骨を開き、心臓に直接アプローチする大きな手術だ。
この「胸を開く」という行為は、命を救ってくれる一方で、胸郭や筋膜には長く残る“クセ”をつくる。
特に幼少期の開胸は、その後の体の成長プロセスに微妙に影響するらしい。
胸を守るような姿勢が自然と身につき、胸郭が少し硬くなる。そして大人になって再び開胸をすれば、さらに胸の前の組織は固まりやすくなる。
私は長い間これを“意識の問題”だと思っていたけれど、それは違った。
「構造がそうなりやすい」だけだった。
なぜ整体では治らないのか?
整体で一時的に整うのに、家に帰る頃には元どおり。
それには、医学的に説明できる理由がある。
胸骨の可動域は“手では一時的”にしか変わらない
開胸手術で胸骨が切開されると、その周囲の組織は硬くなりやすい。
これを整体で外から動かしても、深層の硬さまでは届かない。
だから、矯正後は整っても
数時間で体が“守る姿勢”に戻る。
小胸筋が常に緊張している
胸の外側にある小胸筋は、巻き肩の主犯。
開胸後はこの筋肉が“守りモード”で固まりやすく、肩を前に引っ張る。
整体で肩を外側に戻しても、
小胸筋が固いままだと、肩はまた前へ入る。
肩の左右差は胸郭の非対称によるもの
肩が傾くのは肩の問題だけではない。
肋骨の動き、肩甲骨の滑り方、呼吸の入り方──
全部、胸郭の形に左右される。
2回の開胸による微妙な左右差は、整体で“肩だけ”整えても戻ってしまう。
呼吸のクセが巻き肩を固定化する
慢性心不全などがあると、どうしても呼吸が浅くなる。
胸郭の動きが小さい=胸が開きにくい
→ ここでも肩が前に戻りやすくなる。
整体で整えても、
「1日に2万回の呼吸のクセ」に勝てるはずがない。
悪いのは“私の体”じゃなかった
整体の先生から「戻るね」と言われるたびに、
私の努力が足りないのかなと少しだけ落ち込んでいた。
でも違った。
開胸手術を2回も経験して、胸の前も背中も、
むしろここまで頑張ってくれてる方がすごい。
戻るのは当然。構造がそうなっているだけ。

知れば知るほど、
「私の体、よくここまで生きてきたな」って思います。
じゃあ、どうすればいいの?
結論はシンプル。
整体“だけ”では戻る。
だから日常で、
- 胸の前をゆるめる
- 肩甲骨を動かす
- 呼吸を整える
この3つを少しだけ積み重ねると、
初めて姿勢がキープできるようになる。
私は最近、1日30秒の巻き肩対策のストレッチを続けている。簡単じゃなきゃ続けらない性分なので超簡単のを探してやってます。YouTubeで検索をかけると巻き肩対策のストレッチを紹介している人がいるので、自分ができそうなものを見つけてみてくださいね。
最後に──同じ悩みを抱える誰かへ
もしこの記事を読んでいる人が
「整体で治らない巻き肩」
「左右差がずっと残っている肩」
に悩んでいるなら、伝えたい。
それはあなたが悪いんじゃないかもしれない。
体が悪いわけでもないのかもしれない。
その体には“歴史”がある。
手術や病気を乗り越えてきた歴史。
守りながら生きてきた歴史。
だからこそ、優しくケアすれば変わっていく。
私も今、ようやく少しずつ変化を感じている最中です。
★本記事の内容は、過去の手術や体験にもとづく私個人の感じ方や気づきをまとめたものです。医学的な 評価や診断、治療を示すものではありません。症状や体の状態には個人差がありますので、体に不安がある場合や専門的な判断が必要な場合は、必ず医師・医療機関にご相談ください。
このあと読むならこちらもおすすめです↓↓


