入学直後のカルチャーショック

先天性心疾患の記録

──体育会系高校のリアルはこうだった

 結論から言うと——私はこの高校で、“弱いままでも前に進める”ことを知った。
そのきっかけになったのは、運動神経でも根性でもなく、仲間の存在だった。

 

 仲のいい友達がいるというだけで勢いで選んだ体育会系高校。
今思えば、受験生の私に「ちょっと落ち着け」と言いたい。でも、あの頃の私はテンションだけで生きていた。

入学式の日、校門をくぐった瞬間に胸がざわっとした。

(あ、場違いなとこ来たかも。)

 

運動場にはすでに “動けるオーラ” をまとった先輩たち。
片手にボール、片手に青春。
こっちは先天性心疾患もちで、体力ゲージは常に赤。そりゃ泣きそうにもなる。

…が、意外にも “できない民” もそこそこいた。

「跳び箱ムリ!」
「わかる、あれ何段ある?」

そんな小声の共感が、いつしか不思議な仲間意識へと変わっていった。

 

あるとき、バレーのレシーブが全然うまくいかなくて腕が赤く腫れた日。
落ち込んでいた私に、友達が言った。

「ほら、もう1回! あ、違う、それ手がコップになってるから!」

ツッコミ交じりでフォームを直してくれるその優しさに、胸がじんとした。
体育会系ってもっとギラギラしていると思っていたけど、意外とあったかい。

 

しかし、本当の衝撃は放課後にやってきた。
体育祭前名物の “闇練(ヤミレン)”

まず名前のクセが強い。
運動場で全体練習が終わった後、なぜか土手に移動して追加練習。

いや、なんで土手。
どこまで鍛えたいの、この高校。

私は開始5分で心が帰宅し、10分で魂が旅立った。笑

 

そんな中、毎回なぜか最後までテンションが落ちない女子がひとりいて、私は密かに “人間じゃない説” を疑っていた。

「あと1本いけるよ!」

その子の “あと1本” は永遠で、もはや哲学。
心臓はバクつき、息は上がり、内心「私、明日生きてる?」と本気で思った。

もともと心臓病だし、体力もない。
心が折れた回数は、年に数回どころじゃなかった。

 

でも、折れたときに限って、友達は隣で笑ってくれる。
冗談まじりに、でもちゃんと励ましてくれる。

その存在が、不思議と私の背中を押してくれた。

 

入学直後のカルチャーショックは、
想像していた “体育会系の厳しさ” だけじゃなかった。

それ以上に、想像以上に、“優しさ” があった。

運動が苦手で、体力に不安があって、入学した瞬間は震えていた私が、
「ここで頑張れるかもしれない」と思えたのは、紛れもなく仲間のおかげだ。

 

怖さも、不安も、まだ全部は消えない。
でも——

弱さを抱えたままでも、一緒に進んでくれる誰かがいれば、前に進める。

この高校で、私はそれを知り始めた。