手術の前、私はずっと不安だった。
これから生活はどう変わるんだろう。仕事は続けられるんだろうか。制度のことなんて、正直よく分からないまま、漠然とした不安だけがあった。
調べても難しい言葉ばかりで、当事者がどうだったかを書いている記事がなかった。
これは、手術の前の私が知りたかった話だ。
ファロー四徴症を抱え、人工弁置換術を経験した私が、制度のことをできるだけわかりやすく書く。私の場合の話として。お金の話なので正確に。でも、難しくなりすぎないように。
人工弁を入れると障害者手帳はどうなる?

人工弁置換術を受けたことで、私は身体障害者手帳1級の認定を受けた。
心臓機能障害の身体障害者手帳には認定基準があり、人工弁置換術を受けた人についても基準が定められている。細かい条件は自治体や個々の状態で確認が必要だけど、私の場合ははっきり1級だった。
そして大事なことがある。再認定の期限がなかったことだ。
身体障害者手帳は、状態が変わる可能性がある場合、数年ごとに見直しの「再認定」がある。でも私の場合、その期限は設けられていなかった。人工弁は体に入れたら外すことがないから、状態が変わらない前提なんだと思う。
私は手術後に手帳を取得して、それ以来、更新の手続きを一度もしていない。
「重度障害者」に
正直に言うと、それまで私は「重度障害者」という言葉に、勝手なイメージを持っていた。もっと日常的に介助が必要な、大変な生活を送っている人たちのことだと思っていた。人工弁を入れる手術は大変だったけど、寝たきりでもないし、介護が必要な生活でもない。「こんな私が、重度障害者になるんだ」という驚きと、「障害者になってしまった」というショックが同時にきた。
そんな未来、人生で一度も頭をかすりもしなかった。
でも、ふと思う。人工弁を入れたから「障害者」になったのではなく、私は生まれたときからこの体だった。制度が追いついたのが、今だっただけなんじゃないか。
そのことに、今でもときどき、答えが出ないまま考え込む。
だったら、せめて使い倒そう。そう決めた。
障害者手帳1級で受けられる恩恵は?
交通費
手帳1級で受けられる優遇は、思ったより多い。
| 交通機関 | 割引内容 |
|---|---|
| 新幹線 | 運賃・料金が約6割に(収入関係なし) |
| バス | 半額 |
新幹線の割引は、収入があってもなくても同じ。
私はフルタイムで働いているが、ちゃんと適用されている。
レジャー・施設
最近は障害者割引を導入する施設が増えている。
- USJ
- ディズニーランド・ディズニーシー
- 美術館・博物館
施設によって内容は違うが、本人と介護者1名が無料・割引になるケースが多い。
行く前に確認してみてほしい。
税金控除
身体障害者手帳1・2級は「特別障害者」という区分になる。
特別障害者には、毎年こんな控除がある。
| 税金の種類 | 控除額 |
|---|---|
| 所得税 | 40万円の控除 |
| 住民税 | 30万円の控除 |
「控除」というのは、課税される所得から差し引ける金額のこと。
つまり、税金の計算のもとになる金額が減る。
私はフルタイムで働いているので、この控除は毎年かなりの節税になっている。
障害年金はどうなる?
手帳とは異なる等級に
ここで「えっ?」となる人が多い。
手帳は1級なのに、障害年金は3級なのだ。
「おかしくない?」と思うかもしれないが、これは制度の仕組みが違うから。
- 障害者手帳 → 身体の障害の程度で決まる(福祉制度)
- 障害年金 → 生活・労働への影響で決まる(年金制度)
私は人工弁置換術を受けて、障害厚生年金3級を受給している。ただ、障害年金は個々の病状や日常生活・就労への影響を踏まえて判断されるものなので、「人工弁を入れれば必ず3級になる」という意味ではない。自分の場合どうなるかは、年金事務所や加入している年金制度の窓口で確認してみてほしい。
申請方法
申請は自分でもできるが、制度が複雑で書類も多い。
私は共済組合(公務員の年金窓口)を通して手続きをした。
たまたま親身になってくれる担当の方に当たって、書類の作成から提出までサポートしてもらえた。
社会保険労務士(社労士)に依頼する方法もある。
費用はかかるが、手続きをすべて代行してもらえるので、体調が悪い時期には頼る価値がある。
実際にもらえる金額と、税金のこと

受給額の目安
私が受給している障害厚生年金3級は、年間約60万円。月に換算すると、約5万円になる。
障害厚生年金3級には最低保障額があるけれど、実際の受給額は加入期間や報酬などによって変わる。
私は現在も働いているが、障害厚生年金3級を受給している。働いているからといって、必ず受給できなくなるわけではない。ただ、年金制度上の受給要件や認定基準があるので、個々の状況については年金事務所などに確認してほしい。
障害年金は「非課税」
障害年金は税金がかからない。
確定申告や年末調整で申告する必要もない。
老齢年金(65歳からの一般的な年金)は課税対象だが、障害年金は違う。
これも大きなメリットだ。
65歳になったらどうなる?
「65歳になったら障害年金はなくなるの?」という質問をよく見かける。
なくなるのではなく、「選ぶ」ことになる。
65歳になると老齢年金(一般的な年金)ももらえるようになる。
公的年金は「1人1年金」が原則で、2つ同時にはもらえない。
だから65歳になったとき、
- 障害年金を続けるか
- 老齢年金に切り替えるか
を自分で選ぶことになる。
ポイントは「どちらが多いか」だけでなく、「どちらが税金を含めて手取りが多いか」で判断すること。
障害年金は非課税、老齢年金は課税対象という違いがあるからだ。
65歳が近づいたら、年金事務所や共済組合に試算してもらうといい。
まとめ:制度を知るだけで、手取りが変わる
私の場合、人工弁置換術を受けたことで、
- 障害者手帳 1級(永久認定)
- 障害年金 3級(年間約60万円・非課税)
- 税金控除 所得税40万・住民税30万
この3つがついてきた。ただし、手帳や障害年金の認定、利用できる制度は、個々の状況によって異なる。
知らなければ損をする。申請しなければもらえない。でも知っていれば、体に人工弁を抱えながらでも、経済的に安定した生活が送れる。
私はこの制度を使い倒している。おかげで、同年代の公務員の中でも手取りはかなり多い方だと思っている。
病気だから不利、ではなく。
病気だからこそ使える制度がある。
これは、あの日の私が知りたかった話。そして今、同じ場所に立っている誰かに、届けたい話だ。
⚠️ この記事は私自身の体験に基づくものです。手帳の等級や障害年金の受給額・認定基準は、病状や個々の状況によって大きく異なります。ご自身の場合については、必ず年金事務所・自治体窓口・社会保険労務士など専門機関にご確認ください。


