人工弁には、種類がある。
「どっちの弁にしますか?」と聞かれても、手術前の私には何が違うのかよくわからなかった。
でも実は、選ぶ弁の種類によって、飲む薬も、次の手術の時期も、生活のしやすさも変わってくる。
ファロー四徴症を抱え、人工弁置換術を経験した私が、生体弁を選んだ理由と、その後に起きたこと、そして20年後の再手術についてリアルに書く。
1. 機械弁と生体弁、何が違うの?
人工弁には大きく2種類ある。
機械弁
金属でできた弁。耐久性が高く、基本的に一生交換不要とされている。 ただし、弁の周りで血栓(血の塊)ができやすいため、ワーファリン(抗凝固薬)を一生飲み続ける必要がある。
生体弁
動物(主に豚や牛)の組織から作られた弁。自然な構造に近いため、血栓ができにくく、ワーファリンが不要、または短期間で済むケースが多い。 ただし、耐久性は機械弁より低く、およそ15〜20年で交換が必要になる。
簡単にまとめるとこうなる。
| 機械弁 | 生体弁 | |
|---|---|---|
| 耐久性 | 高い(基本的に交換不要) | 15〜20年で交換 |
| ワーファリン | 一生必須 | 不要または短期間 |
| 血栓リスク | 高め | 低め |
どちらが正解、ということはない。 年齢や体の状態、ライフスタイルによって、医師と相談しながら選ぶものだ。
2. 私がワーファリンをやめた理由
私は生体弁を選んだ。
手術後、しばらくはワーファリンを飲んでいた。 でもある日、大出血が起きた。
原因は子宮腺筋症だった。
子宮腺筋症は、子宮の筋肉の中に子宮内膜の組織が入り込んでしまう病気で、月経時の出血量が異常に増えることがある。 そこにワーファリンが加わって、血が止まりにくい状態になっていた。
出血はひどく、ワーファリンをやめることになった。
3. 同じ大学病院なのに、連携がなかった
ここで、ずっとモヤモヤしていることを正直に書く。
心臓の手術も、婦人科の治療も、同じ大学病院だった。
なのに、連携がなかった。
ワーファリンを飲んでいることが婦人科に伝わっていなかったのか、それとも伝わっていても考慮されなかったのか。 結果的に私は、子宮内膜焼灼術まで受けることになった。
「ワーファリンをやめられる」と知っていれば、あの手術は必要なかったかもしれない。
今となっては、生理がこなくなって楽になったのは事実だ。 でも、知らなかったせいで手術を受けた、という事実は変わらない。
同じ病院にかかっているなら、必ず科をまたいで情報共有されているとは限らない。 複数の科にかかっている方は、自分から「こういう薬を飲んでいる」と伝えることを強くおすすめする。
4. 20年後の再手術のこと
生体弁は、機械弁と違って永久ではない。 およそ20年が目安で、いつかまた手術が必要になる。
最初にそれを聞いたとき、正直しんどかった。 また手術か、と思った。
でも今は、それほど怖くない。理由がある。
5. 先生が「未来」を考えて選んでくれた弁
手術のとき、先生はこう言っていた。
「20年後には、開胸手術じゃなくてカテーテルでできるようになっているはずだから」
そのために、豚の弁の中でも大きめのものを選んでくれたという。
カテーテルで弁を交換する手術(TAVI/TAVRと呼ばれる手術方法)は、既存の弁の内側に新しい弁を入れる。だから、最初の弁が大きいほど、次の手術がやりやすくなる。
先生は、20年後の私のことを考えて、弁を選んでくれていた。
それを知ったとき、「この先生に手術してもらってよかった」と心から思った。
医療は日々進歩している。 20年後、再手術のときには、今より体への負担がずっと少ない方法で受けられるはずだ。
怖いのは「知らないこと」だ。知れば、少し楽になる。
まとめ
- 人工弁には機械弁と生体弁がある
- 生体弁はワーファリン不要または短期間で済む
- ただし15〜20年で再手術が必要
- 複数の科にかかる場合は、自分から薬の情報を伝えること
- 20年後の再手術は、カテーテルでできる可能性が高い
不安なのは、わからないからだ。 知ることで、前に進める。
⚠️ この記事は私の体験をもとにしたものです。弁の種類や治療方針は個人の状態によって異なります。必ず担当医にご相談ください。


