ファロー四徴症で3人出産した話|命を削った妊娠・出産のリアル

先天性心疾患の記録

ファロー四徴症の手術後、大人になってからの妊娠・出産について書いた話を、手術前にどれだけ探しても見つからなかった。だから書く。

3人全員、心臓に異常なく生まれてきた。奇跡と言われた。

でも出産するたびに、私の心臓は弱っていった。

3人目を産んだあと、私は寝たきりになった。誰かの手助けなしには、子育てができなかった。それが、人工弁置換術を決断した理由だった。

これは、どこにも書いていない話だ。


妊娠前に主治医に言われたこと

妊娠が分かったとき、主治医にはっきり言われた。

「個人の産婦人科では産まないこと。心臓血管外科のある総合病院で産むこと」

何かあったとき、すぐに対応できる体制が整っていないと危険だからだ。

もう一つ、気になっていたことを聞いた。子どもに遺伝するのか、ということだ。

先天性心疾患をもつ親から生まれる子どもが同じ病気になる確率は、一般より少し高い2〜5%程度とされている。決して高い数字ではないが、ゼロではない。

私の3人の子どもは、全員心臓に異常なく生まれてきた。「奇跡」と言われた言葉は、今も忘れない。


1人目|大学病院で帝王切開

1人目は、主治医のいる大学病院で産んだ。

妊娠中は動きすぎて切迫流産になり、入院した。これは2人目も3人目も同じで、毎回入院することになった。

1人目は逆子だったため、帝王切開になった。逆子でなければ自然分娩だったかもしれない。でも結果的に、帝王切開になった。


2人目|里帰り出産で、初産同然の陣痛

2人目は里帰り出産で、総合病院で産んだ。

その病院は「1人目が帝王切開でも、2人目は自然分娩を推奨する」という方針だった。あとから知ったことだが、その方針がどれだけ大変なことかを、身をもって体験することになった。

1人目は帝王切開だったから、自然分娩の陣痛は初めてだった。初産同然だった。

陣痛に1日半耐えた。力が尽きそうになりながら、なんとか産んだ。

特に大きな問題は起きなかった。でも、あの1日半は今も忘れられない。


3人目|緊急帝王切開、そして心不全

3人目は、授かった命だった。計画していたわけではなかった。

上の子ふたりは小学校と保育園に通っていたから、今回は里帰りしなかった。1人目と同じ大学病院で、帝王切開の予定で準備していた。

ところが、予定日よりだいぶ早く陣痛が始まった。

緊急帝王切開になった。陣痛が来ていたから「自然分娩でもできますよ」と言われ、一瞬迷った。でも帝王切開を選んだ。

あとで主治医に言われた。「羊膜が薄くなっていた。自然分娩だったら危なかったかもしれない」と。

あのとき帝王切開を選んでよかった、と心から思った。


退院前日、心不全

3人目を無事に産んで、退院を翌日に控えた日のことだった。

体がおかしかった。とんでもなくむくんでいた。息が苦しかった。

でも、主治医は来なかった。連絡が取れないとかで、3日ほど放置された。

大学病院にいるのに、産科と心臓血管外科の連携がなかった。同じ病院でも、科をまたいだ対応は自動的にはされないのだ。これは以前にも経験していたことだったが、こんな場面でまた同じことが起きた。

しびれを切らして、私は自分で言った。

「心不全の症状だと思います」

その一言で、事態が一変した。すぐに血液検査が行われた。結果を見た医師が言った。「あ〜、やっぱり」。

自分で言わなかったら、どうなっていたかわからない。

入院中であっても、自分の症状は自分で声に出すこと。これは、同じ病気の方に強く伝えたいことだ。


出産するたびに、心臓が弱っていった

3人目を産んだあと、私は寝たきりの日が増えた。

誰かの手助けなしには、子育てができなかった。授かった命なのに、自分で育てられない。その悔しさと申し訳なさは、言葉にならなかった。

振り返ると、出産するたびに心不全の症状が出てきていた。薬なしでは生きていけない体になっていた。出産前は心不全の症状は特になかったのに。

出産は、命を削ることだと思った。

それでも、3人の子どもがいる。後悔はない。

ただ、「次は妊娠しないでね」という医師の言葉は重く受け止めた。3人目の出産と同時に、卵管結紮をした。


人工弁置換術を決断した理由

寝たきりで、誰かの手を借りないと子育てもできない。

このままでいいわけがなかった。

「この状態では、子どもを自分で育てられない」

それが、人工弁置換術を決断した理由だった。手術は怖かった。でも、このままの自分でいることの方が怖かった。

手術後、私は動けるようになった。今はフルタイムで教員として働いている。

あのとき手術を選んでよかった、と今は思っている。


ファロー四徴症は完治しない。手術後も大人になっても、心臓と一生付き合っていく。それでも3人産んだ。

まとめ

  • 心臓血管外科のある総合病院で産むこと
  • 子どもへの遺伝リスクは2〜5%程度(一般より少し高い)
  • 複数の科にかかる場合、連携は自動ではされない。自分から症状を伝えること
  • 出産は心臓に大きな負担をかける
  • それでも、3人産んだ

知っていれば、少し楽になることがある。同じ病気で妊娠・出産を考えている方に、この記事が届いてほしい。


⚠️ この記事は私の体験をもとにしたものです。妊娠・出産のリスクは個人の状態によって大きく異なります。必ず担当医にご相談ください。


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